うつ病などの精神疾患を抱えて、働きたくても働けずに困っている人たちに向けて障害年金の請求代行サポートを開始。
現在は、社会保険労務士6名、日本年金機構勤務経験者4名の専門チームで、全国のうつ病等で悩む方々の障害年金請求手続きを支援している。
[うつ病などの障害年金請求代行]
障害年金には、更新手続きが不要な「永久認定」と、定期的に更新手続きが必要な「有期認定」があります。特に、精神障害や知的障害の場合は、ほとんどが有期認定に該当します。
障害年金の更新手続きは、多くの受給者にとって心配の種です。「更新で落ちたらどうしよう」「年金の支給が止まったらどうなるのか」といった不安を抱える方は少なくありません。
この記事では、障害年金の更新手続きの流れや注意すべきポイントを詳しく説明します。さらに、更新で落ちる(支給停止になる)確率や、支給停止後の再開手続きについても解説します。
少しでも更新手続きに対する不安が和らぎ、安心して次の更新を迎えられるよう、サポートができたら嬉しいです。
目次
障害年金を受給している方の多くは、基本的に「更新」の手続きが必要です。この更新手続きは、障害の状態が今も継続しているかを確認し、年金の支給を続けるかどうかを判断するために行われるものです。
障害年金には、「永久認定」と「有期認定」があります。
永久認定・・・
症状が固定し、今後も変化がないと判断された場合に認定されます。(例えば、手足の切断や人工関節の挿入置換、失明などのケース。)更新は不要で、生涯にわたって障害年金を受け取ることができます。
有期認定・・・
定められた期間ごとに更新が必要な認定です。多くの場合がこの有期認定となり、障害の状態が変化すると、障害等級が見直されます。有期認定の期間は、障害の状態などに応じて個別に判断されます。
日本年金機構のデータによると、初回認定時に永久認定に該当する受給者の割合はわずか8.4%であり、残りの受給者は有期認定に該当します。つまり、多くの方が定期的に更新手続きを行わなければならないことがわかります。
(参考:障害年金業務統計(令和5年度決定分))
障害年金の更新は、通常1年~5年ごとの期間で行われます。更新時期は個別に定められていて、次回の更新時期は日本年金機構から送付される通知書類に記載されています。
初回の更新時期は、年金証書の右下にある 「次回診断書提出年月」で確認できます。
更新手続きの流れは以下の通りです。
①更新書類の受け取り:誕生月の3か月前の月末に、日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が送られてきます。
②診断書の依頼:医療機関を受診し、診断書を作成してもらいます。
③書類の提出:「障害状態確認届」を、誕生月の月末までに日本年金機構に提出します。
④審査結果の通知:提出後、審査が行われ、約3~4か月後に結果が送付されます。
例えば、8月が誕生日の方の場合は、5月末頃に「障害状態確認届」が郵送されます。
6月1日から8月末日までの現症日で、医師に診断書を作成してもらい、8月末日までに日本年金機構に提出する、という流れになります。
提出が遅れると、年金が一時的に差し止めになる場合があります。ただし、その後提出して認められれば、差し止められていた分も含めて支給が再開されます。慌てずに手続きを進めましょう。
また、次回の更新に備えて、診断書は両面コピーを取り、忘れずに保管しておきましょう。
障害年金の更新で最も重要なポイントは、診断書の内容です。
更新手続きは基本的に「障害状態確認届(診断書)」の提出のみで済むため、初回の認定時に比べて負担は軽くなります。しかし、診断書が唯一の判断材料となり、その内容に不備があると支給が停止されたり、等級が下がったりする可能性があります。診断書が出来上がったら必ず内容を確認し、慎重に手続きを進めましょう。
特に、うつ病などの精神疾患の場合は、障害の程度を検査数値で表すことが難しく、診断書の内容に基づいて、日常生活や就労にどれくらいの制限があるか審査されます。
以下のように、前回診断書を提出した時と状況が異なる場合は、特に注意しましょう。
認定時と医療機関や担当医が異なる場合、新しい医師に症状が十分に伝わっていないことがあります。その結果、診断書が実際の症状よりも軽く記載されてしまうと、審査で「症状が改善した」と判断されてしまうことがあります。
このような時は、参考として認定時の診断書のコピーを渡すことも有効な方法です。認定時と比べて心身の状態がどう変化しているかを伝え、医師に理解してもらうようにしましょう。
認定時には働いていなかったけれど、更新時には働いている場合、「働けているならば、症状は軽くなった」と審査では判断されやすくなります。
障害者雇用枠での就労であったり、周囲から援助や配慮を受けていたりする場合は、必ず診断書に記載してもらいましょう。
精神障害の場合は、審査において日常生活状況が重視されており、「一人暮らし=日常生活に大きな支障がない」と判断されてしまうことがあります。
別居の家族から援助を受けていたり、訪問介護などの福祉サービスを利用していたりする場合は、それらを診断書に記載してもらいましょう。
前回と比べて処方薬が減少した場合、「症状が軽快した」と判断されることがあります。転院したばかりで治療方針を調整している段階や、副作用が強くて薬の調整を行っている場合は、その理由を診断書に記載してもらうことが重要です。
次に、障害年金が支給停止になる確率や、原因ついて解説します。
更新手続きの結果、年金が停止される確率はどのくらいなのでしょうか?
日本年金機構のデータによると、障害年金全体の更新において支給停止となる確率は1.1%、減額になる(等級が下がる)確率は0.8%です。
(参考:障害年金業務統計(令和5年度決定分))
この数字で見ると、多くの方が継続して受給できていることが分かります。しかし、支給停止や減額の可能性はゼロではなく、十分に留意する必要があります。
障害年金の支給停止には、主に以下の原因が考えられます。
更新時の診断書により、障害の状態が軽くなったと判断された場合は、年金の支給が停止されたり、等級が下がったりすることがあります。
ただし、実際には症状が改善していないにもかかわらず、診断書が実際より軽い症状で作成されてしまい、障害等級に該当しないと判断されてしまうこともあります。
特に注意が必要なのは、認定時と医療機関や担当医が変更している場合です。新しい医師に症状が十分に伝わっていないと、診断書が実際の症状よりも軽く記載されてしまうことがあります。必要な場合は、認定時の診断書のコピーを渡し、作成時の参考にしてもらいましょう。
主治医とは日頃からしっかりコミュニケーションをとり、症状が正確に診断書に反映されるようにすることが重要です。
診察時に緊張して自分ではうまく伝えられない方は、あらかじめ伝えたいことをメモにまとめておく、または家族に同行してもらうなどして、伝えられる工夫をしてみましょう。
ちなみに、CRTやCRT-Dを装着されている方、腎臓移植された方は更新で支給停止や等級変更になることがあります。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限される場合に支給されます。
日常生活や就労における支障の程度が変化し、障害等級の基準を満たさなくなった場合、年金の支給が停止されたり、等級が下がったりする可能性があります。
特に、請求(申請)時には働いていなかったものの、受給後に働き始めた場合は、更新の際に注意が必要です。
例えば、請求時には精神疾患のため就労できず、障害等級2級の認定を受けた方が、更新時に働いていた場合、障害の程度が軽くなったと見なされることがあります。その結果、等級が3級に変更されたり、年金の支給が停止されたりする可能性があります。
ただし、就労しているからといって、必ずしも等級変更や支給停止になるわけではありません。仕事の内容、就労状況、会社から受けている配慮の内容、生活への支障の程度などを総合的にふまえて判断されます。
医師には自身の日常生活や就労状況を伝え、更新時の診断書に反映してもらうことが大切です。また、障害者雇用や、就労支援施設で働いている場合には、審査で考慮されます。診断書に確実に記載してもらいましょう。
また、うつ病や双極性障害の方などは症状が波のように変動することがあります。日常生活が改善したように見えても、実際には家族や周囲のサポートが不可欠であったり、症状が不安定なことがあります。こうした状況を診断書に適切に反映してもらうことが、支給継続の重要なポイントとなります。
基本、障害年金を受給する際に、所得制限はありません。
ただし、20歳前に初診日のある障害基礎年金(20歳前傷病による障害基礎年金)を受け取っている方は、一定の所得制限が設けられています。
具体的には、前年の所得額が4,721,000円を超える場合は年金の全額が支給停止となり、3,704,000円を超える場合は2分の1の年金額が支給停止となります。
※扶養親族がいる場合は、所得制限額の加算があります。
毎年、受給者本人の前年所得が確認され、所得が減少した場合は、受給が再開されます。
では、もし支給停止になったときはどうしたらよいのでしょう。支給停止になっても障害年金を受け取る権利がなくなった訳ではありません。諦めずに次のような方法を検討しましょう。
障害年金の更新の結果、支給停止となったり、等級が変更されたりして、審査結果に納得がいかないときは「不服申立て(審査請求・再審査請求)」という制度があります。
ただし、一度決定された結果をくつがえすためには、審査をする側が納得できるような客観的な証拠や資料を提出することが求められます。どの点を立証すれば不服が認められるのかを明確にし、適切な書類を整えて進めていくことが重要です。
また、審査請求は「審査結果を受け取った日から3か月以内」に行わなければならないなど、手続きには時間的な制約もありますので、速やかに対応する必要があります。
障害年金が支給停止になっても、受給権がなくなった訳ではありません。障害の状態が悪化した場合は「支給停止事由消滅届」を提出することで、支給の再開を求めることができます。
手続きには、支給停止事由消滅届とともに、診断書を提出する必要があります。ただし、更新時と同じ内容の診断書を提出しても、再開が認められる可能性は低いため注意が必要です。
例えば、障害の状態が軽くなり支給停止となった場合、「再び症状が重くなって、障害等級に該当した」ことを証明しなければなりません。そのため、新たに診断書を依頼する際は、まず支給停止の事実を主治医に伝え、現在の障害状態を詳しく説明したうえで、事実をしっかりと反映してもらいましょう。
認められると、診断書の現症日の翌月分から支給が再開されます。
また、支給停止事由消滅届は、過去に遡って提出することも可能です。ただし、遡及請求と同様に、遡って年金を受給できる期間は、5年が限度です。
支給停止事由消滅届の提出は、支給停止になった後、すぐに行うことができます。しかし、前回提出した診断書と今回の支給停止事由消滅届の診断書の期間が短い場合、短期間で症状に変化があった具体的な理由を証明する必要があるため、注意しましょう。
障害年金の更新の結果、等級が下がって支給額が減少することもあります。例えば、1級から2級や、2級から3級に変更された場合です。
この場合は、「額改定請求」を行い、等級の見直しを求めることができます。
額改定請求を行う際には、医師に新たな診断書を作成してもらい提出する必要があります。
ただし、前回と同じ内容の診断書を提出しても等級変更は認められません。診断書には、症状が悪化したことを具体的に記載してもらうことが重要です。
認められると、請求日の翌月分から増額改定されます。
額改定請求は、原則として等級が変更されてから1年を経過しないと手続きができないので、注意しましょう。
※ただし、例外により1年を待たずに請求できるケースもあります。
障害厚生年金3級を受け取っている方で、これまで一度も2級に該当したことがない場合は、65歳を過ぎると、額改定請求はできなくなります。症状が徐々に悪化している場合は、早めに年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
障害年金の更新手続きは、支給を継続するために欠かせない重要な手続きです。しかし、診断書の内容次第で、年金が支給停止になったり、減額されたりすることがあります。
主治医に現状を具体的に伝え、正確な診断書を作成してもらうことが、支給停止や等級変更を防ぐ鍵となります。
もし支給が停止された場合や、等級が下がった場合でも、適切な対応を取ることで再び支給を受けられる可能性があります。不服申立てや支給停止事由消滅届、額改定請求など、それぞれの状況に合った手続きを検討しましょう。
また、支給停止や等級変更の後で障害の状態が悪化しても、自ら手続きをしなければ、自動的に受給が再開されたり、等級が上がったりすることはありません。忘れずに手続きをしましょう。
もし体調が優れず手続きが難しい場合は、社労士などの専門家へ相談することをおすすめします。
当事務所では、障害年金の請求サポートを受けたお客様に対して、無料で「更新サポート」を提供しています。更新時の診断書の内容をチェックし、適切なアドバイスを行うことで、お客様が安心して手続きを進められるようお手伝いしています。障害年金の請求をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
年金証書や前回の更新決定ハガキを紛失して、更新時期がわからないという場合は、年金事務所に問い合わせると教えてもらえますので確認してみてください。
有期認定される期間は、必ずしも毎回同じとは限りません。障害の状態や医師の診断書の内容によって、次回の更新までの期間が短くなる場合や、逆に長くなる場合もあります。
発達障害の場合、ほとんどのケースで有期認定となります。ADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などの発達障害は、病気が完全に治癒することはありませんが、薬物療法や環境の改善などによって症状が変動する可能性があります。そのため、症状が固定しているとは判断されにくく、永久認定ではなく、有期認定が適用されます。
知的障害の場合も、発達障害と同様に、多くのケースで有期認定となります。場合によっては、永久認定されることがあります。
障害年金の受給を継続するための、収入や勤務日数などの明確な基準はありません。就労状況、日常生活の状況、周りの方々からのサポート内容などを総合的に見て、障害の程度が判断されます。
しかし、うつ病、発達障害などの精神の障害の場合、一般雇用でフルタイム勤務をしていると、更新に影響することがあります。特に、長期間にわたって就労できている場合は、日常生活能力や労働能力があると見なされるため、支給停止になる可能性があります。