
社会保険労務士
梅川 貴弘
うつ病などの精神疾患を抱えて、働きたくても働けずに困っている人たちに向けて障害年金の請求代行サポートを開始。
現在は、社会保険労務士6名、日本年金機構勤務経験者4名の専門チームで、全国のうつ病等で悩む方々の障害年金請求手続きを支援している。
ダウン症のお子様をお持ちのご家庭にとって、将来に対する不安や心配はとても大きなものだと思います。特に、生活の面での支援が必要な場合、どのようにサポートを受けるかは重要な問題です。
ダウン症は、障害年金の対象となる疾患のひとつであり、障害年金を受給することで、経済的な支援を受け、生活の安定を図ることができます。
しかし、「うちの子がもらえるのかわからない」「手続きをうまく進められるか心配」といった声もよく聞かれます。
障害年金を受給するためにはいくつかの条件をクリアする必要があり、ポイントを押さえて手続きを進めることが大切です。
この記事では、ダウン症の方が障害年金を受給するための条件や申請(請求)手続きの注意点について詳しく解説します。
目次
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる公的年金のひとつです。原則、20歳から65歳までの方が対象となります。
ダウン症の特徴のひとつとして、知的障害(精神遅滞)があります。障害の程度は個人によって異なりますが、日常生活において継続的なサポートが必要な場合は、障害年金の受給対象となります。
ただし、ダウン症の方誰もが受給できるわけではなく、受給には一定の条件を満たしている必要があります。
障害年金の受給には、通常、以下の3つの要件を満たしている必要があります。
しかし、ダウン症は先天性疾患のため、「①初診日の要件」と「②保険料の納付要件」は問われません。
では、どれくらいの症状であれば1級または2級に認定されるのでしょうか?
次に、知的障害の認定基準についてご説明します。
障害年金の審査では、提出された書類をもとに、障害の状態が判断されます。
障害年金の審査は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて行われ、知的障害において、以下のように記載されています。
※障害年金には、1級~3級の等級がありますが、3級は障害基礎年金には認められておらず、障害厚生年金にのみ認められています。
ダウン症の方は、障害基礎年金の対象となるため、障害等級1級または2級に該当する必要があります。
次に、障害基礎年金を受給した場合はいくらもらえるのか、年金額についてご説明します。
金額は国で決定され、年度ごとに変動します。下記は、令和6年度の金額になります。
(※)18歳年度末までの子どもがいる場合は、子の加算が支給されます。
子の加算額…第1子・第2子 各234,800円、第3子以降 各78,300円
申請書類のなかでも、特に重要な書類は「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」になります。
障害年金の審査において、最も重要な書類が「診断書」です。この診断書は、障害の程度や日常生活への影響を具体的に記載するもので、医師に作成を依頼します。
知的障害に関する診断書では、日常生活の支援がどの程度必要かを具体的に記載する必要があります。
診断書の裏面には、以下のような項目が並んでいます。これらの身の回りのことが「一人でできるか」という観点から、日常生活への支障がどの程度あるのかが判断されます。
これらの日常生活の詳細を、医師が診察時間内で十分に把握するのは、ほぼ困難です。
そのため、診断書を依頼する際には、日常生活の具体的な状況を事前にメモにまとめるなどし、医師に渡すことをおすすめします。
医師には、実状をきちんと理解してもらい、症状を正確に診断書に反映してもらうことが重要です。
ご家族と一緒に生活していると、周囲から見るとできていないことでも、サポートが当たり前になってしまい、症状を認識しづらくなることがあります。上記の項目は「単身で生活した場合、可能かどうか」で判断します。一人暮らしを想定し、現状を客観的に整理して伝えましょう。
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梅川 貴弘
病歴・就労状況等申立書は、申請者の日常生活の様子やこれまでの経緯を詳細に説明する書類です。障害年金の審査では、診断書の内容を補完する大切な参考資料となります。
申請者本人やご家族が作成するほか、社会保険労務士が代筆する場合もあります。
ダウン症の方の場合、出生日から現在までの時系列に沿って、日常生活状況や就労状況を記載する必要があります。
作成の際はできるだけ具体的・客観的表現を心がけましょう。障害年金の審査は、書類のみで行われるため、具体的な例やエピソードを盛り込むことで、申請者のことを全く知らない審査員が読んだときにも、より正確な状況を伝えることができます。
具体的には、次のような内容を記載します。
病歴・就労状況等申立書では、日常生活や就労にどれだけ制限があるか、どのようなことに困っているのかを伝えます。そのため、できることではなく「できないこと」を重点的に記入することが大切です。
ダウン症の方の場合、ご家族が申立書を作成することも多いと思います。ご家族としては、「できないこと」を書き出していく作業は心苦しく感じるかもしれません。精神的に負担になるような場合は、社労士などの専門家に代筆を依頼することもひとつの方法です。
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ダウン症の方は、20歳から障害年金を受け取ることが可能です。
障害年金は「障害認定日(※)」以降、申請ができます。※障害の状態を認定する日
ダウン症のように先天性疾患の場合、障害認定日は20歳到達日(20歳誕生日の前日)となります。20歳になったらすぐに申請ができるよう、20歳の誕生日が近づいてきたら準備を進めましょう。
また、20歳時点での申請には、20歳到達日前後3か月以内の診断書が必要です。
定期的な通院や服薬の必要がない方は、かかりつけ医がいない場合もあると思います。高校などに在学中から、診断書を依頼できる医師をあらかじめ見つけておくと良いでしょう。また、1回の受診では医師に症状を理解してもらうのは難しいため、20歳になる前に何度か受診し、担当医としっかりコミュニケーションを取っておくことをおすすめします。
障害年金を申請する際には、「年金生活者支援給付金」も一緒に申請しましょう。
この給付金は、障害基礎年金の受給者で一定以下の所得者に対し、支給されます。しかし、自動的に支給されるものではなく、自ら申請しなければなりません。
以下の請求書に必要事項を記入し、障害年金請求書と同時に提出します。
障害年金は、知的障害が軽度であっても、受給することは可能です。
障害年金の審査において等級判定の目安となる『等級判定ガイドライン』では、知能指数や療育手帳と障害年金の等級判定について次のように記載されています。(知的障害の場合)
・知能指数を考慮する。ただし、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。
・療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級又は2級の可能性を検討する。それより軽度の判定区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討する。
知能指数や療育手帳の区分は いずれも、障害年金の審査の際に考慮すべき要素として挙げられていますが、それによって障害年金の等級が決まるわけではありません。
知能指数が50以上であったり、療育手帳の区分が軽度であったりしても受給の可能性は十分にあります。申請書類では、日常生活において援助が必要なことをしっかり伝えましょう。
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梅川 貴弘
障害年金は、働いていても受給することは可能です。
『等級判定ガイドライン』では、就労状況と等級判定について次のように記載されています。(知的障害の場合)
・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば2級の可能性を検討する。
・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
つまり、働いているからといって不支給となることはありません。
仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、周囲とのコミュニケーションの状況なども十分に考慮して判断されます。
医師には、就労の状況を詳しく伝え、診断書に反映してもらうことが大切です。また、障害者雇用や就労支援施設での就労は審査で考慮されますので、必ず診断書に記載してもらいましょう。
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梅川 貴弘
ダウン症の方は、心疾患や視覚障害、聴覚障害などの合併症を持つ場合があります。この場合、知的障害とあわせて障害年金を申請することで、症状の程度によっては更に上位の等級に認定される可能性もあります。
障害年金は障害の種類ごとに診断書が異なります。そのため、知的障害と合併症をあわせて申請する際は、合併症の診断書も別途用意する必要があります。
続いて、障害年金を受給したあとの注意点について解説します。
障害年金は多くの場合「有期認定」となり、通常1年~5年ごとに更新の手続きが必要になります。更新の際には、障害の状態に応じて障害等級が見直されることがあります。
更新手続きは受給者やご家族にとって、常に不安や心配が伴います。
当事務所では、障害年金の請求サポートを受けたお客様に対して、無料で「更新サポート」を提供しています。
更新時の診断書の内容をチェックし、適切なアドバイスを行うことで、お客様が安心して手続きを進められるようお手伝いしています。障害年金の請求をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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ダウン症の方が受給する「20歳前傷病による障害基礎年金」については、年金の加入を要件としていないことから、年金の支給に関して制限や調整があります。
▶所得による支給制限
前年の所得額が以下の場合は、年金額が調整されます。
なお、扶養親族がいる場合は、所得制限額の加算(38万円~63万円)があります。
支給停止となる期間は、10月分から翌年9月分までとなります。
毎年、受給者本人の前年所得が確認され、所得が減少した場合は、受給が再開されます。
▶その他の支給制限
労災保険の年金等を受給する場合は、障害年金の受給額が調整されます。また、海外に居住したときや刑務所等の矯正施設に入所した場合は、年金の全額が支給停止されます。
ダウン症の方は、20歳から障害年金を受給することが可能です。20歳を迎えたらすぐに申請ができるように、早めに準備を進めることが大切です。
審査では、知能指数や療育手帳の区分だけで等級が決定されるのではなく、日常生活での支援の必要性が重要な判断基準となります。
医師に診断書を依頼する際は、日常生活における具体的な支障や援助の内容をしっかり反映してもらうことが重要です。
もし申請に不安がある場合や手続きが複雑に感じる場合は、社労士に依頼することも選択肢のひとつです。社労士は、障害年金申請のプロとして、申請書類の作成や手続きのサポートを行います。
当事務所では、無料で相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。
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ダウン症は先天性疾患であるため、出生日が初診日として扱われます。初診日を証明する受診状況等証明書は必要ありません。
小児科や内科の医師がダウン症の診断や治療に従事していれば、問題はありません。今後の更新手続きでは、その都度診断書を提出することになります。成人後も継続して診てもらえる医師を見つけておくと、今後の安心につながります。
障害年金は、原則65歳までであれば、申請が可能です。
一定の条件を満たせば、障害認定日である20歳到達日にさかのぼって請求(遡及請求)することも可能です。
ただし、障害年金には時効があり、過去にさかのぼって年金を受給できる期間は、5年が限度です。申請が遅れると、その分もらえるはずの年金が時効により消滅してしまいますので、早めに申請することをおすすめします。
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