うつ病などの精神疾患を抱えて、働きたくても働けずに困っている人たちに向けて障害年金の請求代行サポートを開始。
現在は、社会保険労務士6名、日本年金機構勤務経験者4名の専門チームで、全国のうつ病等で悩む方々の障害年金請求手続きを支援している。
[うつ病などの障害年金請求代行]
障害年金の申請(請求)において、病歴・就労状況等申立書は欠かすことのできない重要な書類です。
この申立書は、申請者自身が自分の病状や生活状況を直接伝えることができる唯一の手段となります。
ただし、「どう書けばいいのか分からない」「うまく書けるか心配」といった声も多く聞かれます。そのため、病歴・就労状況等申立書を作成できず、障害年金の申請を断念してしまう方も少なくありません。
当事務所にも、自分で手続きを試みたものの、申立書の作成で行き詰まってしまい、申請サポートの依頼をされるお客様が多くいらっしゃいます。
申立書の内容は、障害年金の受給を左右することもあるため、重要なポイントを押さえて記入することが必要です。
この記事では、病歴・就労状況等申立書の書き方のコツを解説し、スムーズに作成できるようサポートします。
目次
「病歴・就労状況等申立書」とは、障害年金を申請する際に必ず提出しなければならない書類のひとつです。
障害年金の審査において、主に重要な書類は以下の3つ。
受診状況等証明書や診断書は医師が作成しますが、病歴・就労状況等申立書は申請者本人(または代理人)が作成します。
この申立書では、自分の病状や障害がどのように日常生活に影響を与えているのかを、申請者側の言葉で伝えることが求められます。
病歴・就労状況等申立書は、診断書を補うための参考資料としての役割を果たします。
診断書は医師の視点で障害の医学的な評価を行いますが、患者の実際の生活状況や具体的な困難までは反映しきれません。
そのため、診断書だけでは伝えきれない、日常生活の実態や就労状況 を、障害者本人の視点から詳しく説明することが大切です。
※病歴・就労状況等申立書は、年金事務所で受け取ることができます。また、日本年金機構のホームページからもダウンロードできます。
※病歴・就労状況等申立書を提出するとき/日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140516.html上記のサイトでは、PDFとエクセル形式のファイルが用意されています。手書きで作成しても問題ありませんが、パソコンが使える方はエクセルでの作成をおすすめします。読みやすく、修正も簡単にできるため便利です。
基本的には、申請者本人が記載しますが、ご家族などに代筆を依頼しても問題ありません。
「周りに頼める人がいない」「病歴が長くて書くのが大変」など、作成に不安がある場合は、社会保険労務士に依頼することもひとつの方法です。
病歴・就労状況等申立書には、発病から現在までの以下のような内容を記載します。
つまり、発病してから今に至るまでの経過を、時系列に沿って詳細に記載する書類です。
日本年金機構による障害年金の審査では、次のような内容を確認するために、病歴・就労状況等申立書が参考資料として重要な役割を果たします。
診断書や受診状況等証明書に記載された初診日が適切かを判断するために、病歴・就労状況等申立書の内容を確認します。
発病から初診の医療機関を受診するまでの経過を見て、他の書類との整合性を確認したうえで、初診日が特定されます。
病歴・就労状況等申立書には、初診までの経緯を詳しく記載しましょう。
遡及請求を行う場合、障害認定日から現在まで障害の状態が継続しているかどうかが重要になります。この期間の障害状態の経過を伝えるために、病歴・就労状況等申立書は非常に重要な資料となります。
※遡及請求とは?…障害認定日時点までさかのぼって、障害年金を請求する方法のことをいう。
※障害認定日とは?…障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日のことをいう。
障害認定日の診断書と現在の診断書は、それぞれの時点での障害状態を証明する資料となりますが、これら2つの資料だけでは障害状態の推移はわかりません。
そこで、病歴・就労状況等申立書を通じて、障害の進行や変化を確認します。
もし、さかのぼる期間中に症状が軽くなっていると判断された場合は、途中で障害等級が変更されたり、遡及請求が認められなかったりする可能性があります。
したがって、病歴・就労状況等申立書には、障害認定日から現在までの医療機関での治療内容や症状の経過、障害の状態などを詳しく記載しましょう。
医師が作成する診断書は、医学的な観点から治療内容や障害の状態が記載されますが、申請者本人の具体的な日常生活までは十分に説明しきれません。そのため、診断書の内容を補完する役割として、病歴・就労状況等申立書が重要な参考資料となります。
病歴・就労状況等申立書には、診断書では伝えきれない、日常生活の実際の様子や就労状況を詳しく記載しましょう。
次に、病歴・就労状況等申立書の具体的な書き方について解説します。
申立書を作成する際は、受診状況等証明書や診断書との整合性を保つことが重要です。作成する際には、これらの書類を手元に準備しておくと良いでしょう。
まずは、病歴・就労状況等申立書の表面の記入方法について説明します。
①傷病名
診断書に書かれている傷病名をそのまま写しましょう。
初診日の証明書である受診状況等証明書と診断書で傷病名が異なる場合は、診断書に記載されている内容を記入します。遡及請求の際、障害認定日と現在の診断書に書かれている傷病名が違うという場合は、両方を記入します。例えば、障害認定日時点の診断書には「うつ病」、現在の診断書には「双極性障害」と書いてある場合は、病歴・就労状況等申立書の傷病名には「うつ病」「双極性障害」の両方を書いてください。
②発病日
受診状況等証明書や診断書に書かれている発病日をそのまま写しましょう。発病日が「〇年△月頃」と断定されていない場合でも、そのまま書いて問題ありません。
※知的障害(精神遅滞)の場合は、出生日を記入します。
③初診日
受診状況等証明書や診断書に書かれている初診日と同じ日を書きましょう。知的障害(精神遅滞)の場合は、出生日を記入します。
なお、初診日については「〇年△月頃」という記載は原則認められません。発病日と異なりますので、気をつけましょう。
※初診日とは?…障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日のことをいう。
④病歴
発病から現在までの、医療機関の通院歴や日常生活の状況などを年月順に記入します。
病歴を記入する際には一定の決まりがあります。この基本的なルールを守っていないと、年金事務所から書き直しを指示されることもありますので、注意しましょう。
また、欄が不足する場合には、病歴・就労状況等申立書(続紙)を使用してください。
なお、発達障害や知的障害の場合には、特に注意が必要です。
これらの障害は先天的なものとして、出生時から現在に至るまでの状況を記入する必要があります。記入する際は、「就学前」「小学校」「中学校」「高校」「大学」などのように成長段階ごとに区切り記述すると、書きやすくなるでしょう。
ただし、以下の2つのケースの場合、1つの欄にまとめて記入することが認められています。
転院した場合は、医療機関ごとに欄を分けて記入します。
また、転院の理由や目的についても記載しましょう。たとえ一度きりの受診であったとしても、別々に記入するようにしましょう。
受診期間が不明確な場合は、「〇年△月頃」といった形で記入しても問題ありません。
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在まで、空白期間がないように状況を記載します。通院していなかった期間があっても、省略せずにしっかりと記入しましょう。
例えば、本当は通院する必要があったにも関わらず、体調が悪くて通院できなかった場合でも、そのことを記載しないと、審査で「症状が軽かったため通院していなかった」と判断されてしまうことがあります。
通院していない期間は、通院しなかった理由やその期間の症状、日常生活の状況などを必ず記入するようにしましょう。
障害年金を申請する傷病と関係がない医療機関への受診歴は、記入する必要はありません。
つづいて、病歴・就労状況等申立書の裏面を見ていきましょう。
「障害認定日頃」の欄と「現在(請求日頃)」の欄というように、大きく2つに分けられています。この2つの時点において「就労状況」と「日常生活状況」を記入するのですが、請求方法によって、記入する欄が異なります。
⑤就労状況
■就労している(していた)場合
▼職種(仕事内容)
職種や業務内容が分かるように、具体的に記入しましょう。
▼通勤方法
通勤方法は、電車やバスなどの交通手段を記入します。在宅勤務の場合は、その旨を書いておきましょう。
▼出勤日数
正確な日数が分からない場合は、分かる範囲で書きましょう。特に、障害認定日の頃は覚えていないこともあるので、だいたいの日数でも問題ありません。
▼仕事中や仕事が終わった時の身体の調子について
就労中や就労後の身体の不調について、具体的に記入しましょう。
例えば…
■就労していない(していなかった)場合
就労していない理由をア〜オの選択肢の中から選びます。休職中の方も、こちらの欄に記入します。
⑥日常生活
■日常生活の制限について
着替え、食事、掃除、買物などの10項目について、下記の4段階の評価から該当する番号を選びます。
1:自発的にできる
2:自発的にできるが援助が必要である
3:自発的にできないが援助があればできる
4:できない
重要なポイントは、一人暮らしを想定して評価するということです。つまり、ご家族などと同居している(していた)場合でも、「もし一人暮らしだったら?」と仮定して判断しましょう。
例えば…
このような場合は、家族からの援助を受けていることになります。結果的に「着替え」や「入浴」ができたとしても「自発的にできる」とはいえません。
■その他日常生活で不便に感じていること
障害が原因で、困っていること、不便なことを記入しましょう。
例えば
⑦障害者手帳
障害者手帳をお持ちの方は、「障害者手帳」欄に忘れずに記入しましょう。
「現在(請求日頃)」の欄にありますが、「障害認定日頃」の欄のみ記入する方でも記入が必要ですので、気をつけましょう。
障害名については、身体障害者手帳の場合のみ記入します。精神・療育手帳の場合は障害名の記載がないため、ここは空欄のままで大丈夫です。
⑧日付・請求者・代筆者
病歴・就労状況等申立書を作成する際は、診断書との内容に矛盾がないように注意しましょう。診断書と整合性を保つことが大切ですので、作成する際には診断書を手元に置いて進めるのがよいでしょう。
受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書には、初診日や受診した医療機関の名前などを記載する欄があり、これらの情報は3つの書類すべてで一致していることが大切です。記載内容にズレがないよう、確認しながら記入することを心がけましょう。
障害年金の審査は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて行われます。
この基準には、障害の程度に応じてどの等級に該当するかが詳細に定められています。
病歴・就労状況等申立書を作成する際は、この障害認定基準を意識し、自分の症状が基準に該当していることをしっかり伝える必要があります。
たとえば、うつ病などの気分(感情)障害の場合、障害認定基準には、「各等級に相当すると認められるもの」の例示として、次のような記載があります。
2級
気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひん ぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの3級
気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの
つまり、うつ病による気分、意欲・行動、思考の障害によってどれだけ日常生活や労働が制限を受けているのかを伝えることが求められます。
これらの症状により、生活や仕事にどれほどの困難があるかを、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。
病歴・就労状況等申立書を作成する際は、障害認定基準を意識し、自分の症状が基準に該当していることをアピールすることが重要です。
病歴・就労状況等申立書は、傷病によって日常生活や就労にどれだけ制限があるか、何ができず、どのようなことに困っているのかを伝えるための書類です。
できることではなく、「できないこと」を重点的に記入することが大切です。
ただし、診断書の内容よりも過度に症状を重く書きすぎると、申立書の信憑性が疑われてしまう恐れがあります。ウソではなく、実際の状況を伝えましょう。
「できないこと」を書き出していく作業は、時に辛く感じたり、気分が沈んでしまったりすることもあるかもしれません。自分の状態を客観的に見つめることは、精神的に負担になることもあるでしょう。
もし自分で書くことが難しいと感じた場合は、代筆を頼むことも考えてみましょう。
同じ内容を伝えるのでも、表現の仕方によって与える印象は変わってきます。
例えば
✖️:家族の援助があれば、日常生活を送ることができる
〇:家族の援助がないと、日常生活を送ることができない
〇の文章の方が、援助が欠かせないことが強調され、支援の必要性がより明確に伝わるのではないでしょうか。
同じ内容でも言葉の選び方ひとつで、相手に伝わるニュアンスは変わります。表現が与える印象に気を配り、より効果的に伝えられるよう工夫しましょう。
障害年金の審査は、書類のみで行われます。申請者のことを全く知らない審査員が読んだときに、傷病によってどのような困難を感じているのかが伝わるよう、具体的かつ客観的に記載することが求められます。
例えば、うつ病で申請する場合
ただ単に、「つらい」「しんどい」という表現ではなく、「どのような状況でどのような支障があり、どのような援助を必要としているのか」、具体的な事例を交えて簡潔に記載するとよいでしょう。
申請する傷病による障害と直接関係のない内容は書く必要がありません。たとえば、次のようなことです。
病歴・就労状況等申立書は、申請者自身が、自分の状況を伝えることができるただ一つの書類です。自分で作成する場合、どうしても苦しみやつらさをわかってほしいという思いが強くなりがちです。
その気持ちはよく分かりますが、「苦しい」「悲しい」などの心情的な言葉を並べたり、「障害年金の受給に対する切実な願い」を訴えたりしても意味はありません。
重要なのは、客観的事実を淡々と書き、その中で病状や困りごとをしっかりと伝えることです。
病歴・就労状況等申立書を読むのは、審査を担当する医師です。
日々多くの審査を行っている医師にとって、字が汚かったり、内容が分かりにくかったりする申立書は、負担に感じるのではないでしょうか。読みづらくて、しっかり読んでくれないかもしれません。だらだらとまとまりのない文章で書いてあるような申立書も同様です。
そのため、申立書を作成する際は、読み手を意識して丁寧に書くことが大切です。可能であれば、パソコンで作成し、文章は端的にまとめる、段落ごとに改行する、など読みやすく工夫しましょう。文章に自信がない場合は、箇条書きで書くのもおすすめです。
また、完成した申立書を家族などに読んでもらうことも有効です。自分では気づかなかったわかりにくい箇所や表現を指摘してもらえるかもしれません。
病歴・就労状況等申立書は、障害年金申請において欠かせない重要書類のひとつです。
障害年金の受給を左右することもあるため、記入すべきポイントをしっかり把握して作成することが大切です。
特に、うつ病や発達障害などの精神の障害で申請する場合は、審査において日常生活や就労の状況が重視されますので、申立書の書き方に工夫が求められます。
障害の状態や過去の経過を詳細に書き記すことは、障害を抱える方にとって精神的・肉体的に大きな負担となることもあります。
自分で作成するのが不安な場合は、専門家である社会保険労務士に相談してみましょう。
社労士は、障害年金申請のプロとして、申請書類の作成や手続きのサポートを行います。記入に悩んだり、負担を感じたりする場合は、無理をせず専門家に頼むことで手続きがスムーズ進み、障害年金受給の近道にもなるでしょう。