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[うつ病などの障害年金請求代行]

発達障害で障害年金はもらえる?申請方法・認定基準・不支給ケースを解説

  • 投稿:2025年10月06日
  • 更新:2025年10月08日
発達障害で障害年金はもらえる?申請方法・認定基準・不支給ケースを解説

「発達障害でも障害年金はもらえるの?」そんな疑問を抱えるあなたへ。

この記事では、障害年金申請(請求)時の注意点や、発達障害に特化した等級判定のポイント、申請の流れをわかりやすく解説します。

不支給になるケースや、その対処法についても紹介しています。

目次

発達障害は障害年金の対象疾患

発達障害は障害年金の対象疾患

発達障害とは、生まれつきの脳の特性によって、コミュニケーションや行動学習などに困難が生じる状態を指します。

発達障害は、大きく分けて3つの種類があります。

注意欠如・多動症(ADHD)
集中力が続かなかったり、思いついたことをすぐ行動に移したりする、不注意・多動性・衝動性という特性がある。
自閉スペクトラム症(ASD)
人との関わりが苦手だったり、特定のものごとに強いこだわりを見せたりする傾向がある。
学習障害(LD)
読む・書く・計算するなど、特定の学習分野が著しく苦手。

これらの特性は人によって現れ方に大きな差があり、軽度であれば日常生活への影響はほとんどありません。

しかし、症状が強い場合は仕事や対人関係に大きな支障をきたし、社会生活が難しくなることもあります。 こうした影響が深刻な場合、障害年金の受給対象となる可能性があります。

大人の発達障害とは

発達障害というと、子どもに多いイメージを持たれがちですが、大人になってから診断されるケースも増えています。特に学生時代までは何とかやり過ごせていたものの、社会に出てから仕事や人間関係に強いストレスを感じ、「なぜ自分だけうまくいかないのか」と悩む中で、発達障害だと診断されることがあります。

大人の発達障害は、一見すると周囲からは分かりにくく、本人も「性格の問題」や「自分の努力不足」と思い込んでしまうことがあります。しかし、実際には脳の特性により、本人の意思とは関係なくトラブルや不安を抱えやすくなるのです。

また、そのような状況が長く続くと、うつ病や不安障害などの二次的な障害を引き起こすこともあります。

障害年金の受給要件

障害年金の受給要件

障害年金を 受給するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

① 初診日の要件

原則として、障害の原因となった病気やケガで初めて病院に行った日(初診日)が年金制度の被保険者期間であること。

ただし、初診日が20歳未満の方や60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、公的年金制度に加入していなくとも、問題ありません。

②保険料の納付要件

初診日の前日において、年金保険料を一定期間以上納付していること。

具体的には、次のどちらかを満たしている必要があります。

  • 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上納付(または免除)していること。
  • 初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。

③障害状態の要件

障害年金の基準に定める程度の、障害状態であること。

障害年金が支給される障害の状態に応じて、法令により、障害の程度(障害等級1~3級)が定められています。

障害年金を受給できる障害の程度とは?

では、障害等級1~3級とはどの程度の症状なのでしょうか?次は、障害認定基準について、ご説明します。

ご注意ください

障害等級という言葉は「障害者手帳」にも使われていますが、障害年金とはまったく別の制度です。障害年金と障害者手帳は審査基準が異なりますので、混同しないよう注意しましょう。

障害認定基準(発達障害)

障害年金の審査は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて行われ、これには、障害の状態がどの程度ならば、何級に該当するかが定められています。

発達障害においては、以下のように記載されています。

1級: 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

不適応な行動とは、例えば以下のような行為を指します。
  • 自分の身体を傷つける行為
  • 他人や物に危害を及ぼす行為
  • 周囲の人に恐怖や強い不安を与える行為(迷惑行為や突発的な外出など)
  • 著しいパニックや興奮、こだわり等の不安定な行動(自分でコントロールできない行為で、頻発して日常生活に支障が生じるもの)

上記の認定基準をわかりやすく言い換えると、以下のようなイメージです。

1級
発達障害により、日常生活のことがほとんどできない状態
(例:食事や入浴も1人では難しい、常に他人の介助が必要、など)
2級
発達障害により、日常生活が著しい制限を受ける状態
(例:他人との意思疎通が難しく、社会生活を送るのに支援が必要、など)
3級
発達障害により、労働が制限を受ける状態
(例:フルタイム勤務は難しい、職場で大きな配慮を受けている、など)
ポイント

3級は障害厚生年金にのみ認められています。つまり、初診日に厚生年金に加入していた場合のみに対象となり、障害厚生年金の方が、障害基礎年金よりも等級の幅が広く設定されています。

障害認定基準では、「発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う」とされています。

つまり発達障害では、仕事や日常生活にどのような支障があるかが、障害の程度を判断する重要なポイントです。この判断は、主に「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」の内容に基づいて行われます。

ただし、発達障害は視力や聴力のように検査数値で客観的に示すことが難しく、外見からも分かりにくい特徴があります。そこで日本年金機構では、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を用いて、障害等級を公平に判断するようにしています。

ガイドラインによる、障害等級の目安

ガイドラインによる、障害等級の目安

発達障害による障害年金の等級は、「障害認定基準」に加え、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(以下、ガイドライン)」に基づいて判断されます。

このガイドラインでは、障害等級を判断する際の目安が示されており、特に診断書(精神の障害用)の裏面に記載されている「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の内容が、等級の目安として重要な位置づけとなっています。

次に紹介する表は、これらの項目に応じて、どの等級に該当する可能性があるかを示したものです。

ガイドラインによる障害等級の目安

この表は、縦軸が診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」の評価の平均値、横軸が「日常生活能力の程度」の評価となり、これらを組み合わせ、どの障害等級に相当するかの目安を示しています。

判定平均・・・「日常生活能力の判定」(1)~(7)の評価を点数化したものの平均値

程度・・・「日常生活能力の程度」

では、診断書を見ながら解説していきます。

日常生活能力の判定

まずは、縦軸になる「判定平均」(=「日常生活能力の判定」の評価の平均)について、ご説明します。

診断書(日常生活能力の判定)

日常生活能力の判定欄では、日常生活の7つの場面における制限度合いを、医師が判定し記載します。この評価は、「単身で生活した場合、可能かどうか」で判断します。

この欄は、審査でとても重要です。ご家族と暮らしている方は、一人暮らしを想定してできるかどうか、を伝えるよう注意しましょう。

障害年金業務責任者綾部真美子

障害年金業務責任者
綾部真美子

①適切な食事
配膳などの準備も含めて適当な量をバランスよく摂ることができるかどうか。
②身辺の清潔保持
洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができるかどうか。また、自室の清掃や片付けができるかどうか。
③金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理しやりくりがほぼできるかどうか。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物ができるかどうか。
④通院と服薬
規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるかどうか。
⑤他人との意思伝達及び対人関係
他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるかどうか。
⑥身辺の安全保持及び危機対応
事故等の危険から身を守る能力があるかどうか。通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるかどうか。
⑦社会性
銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能かどうか。また社会生活に必要な手続きを行えるかどうか。

これら7つの項目は、4段階の評価で判定されます。

それを1~4の点数に置き換え、平均点(7項目の点数の合計 ÷7)を計算したものが「判定平均」になります。障害の程度が重いほど点数が高いことになります。

1点
できる
2点
自発的に(おおむね)できるが時には助言や指導を必要とする
3点
(自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる
4点
助言や指導をしてもできない若しくは行わない

日常生活能力の程度

続いて、横軸になる「程度」(=「日常生活能力の程度」)について、ご説明します。

診断書(日常生活能力の程度)

日常生活全般における制限度合いを包括的に評価し、次の5段階のなかから医師が記載します。

1段階
精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
2段階
精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
3段階
精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
4段階
精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
5段階
精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

ここで判定された項目が「障害等級の目安」の表における「程度」になります。

障害等級の目安

このように、「判定平均」(=「日常生活能力の判定」の評価の平均)と、「程度」(=「日常生活能力の程度」)を組み合わせて、障害等級の目安が示されます。

例えば、日常生活能力の判定の平均値が3.0、日常生活能力の判定が(3)の場合は、2級相当となります。

障害等級の目安(例)
ご注意ください

なお、3級は障害厚生年金のみ認められています。障害基礎年金に3級はありませんので、障害基礎年金を申請する場合は、表内の「3級」は「2級非該当=不支給」と置き換えましょう。

「障害等級の目安」は、絶対ではない

ガイドラインを活用することで、受給の可能性があるかどうかを事前にある程度把握することができます。

ただし、障害等級は「目安」の数値通りに決まるわけではありません。目安はあくまで判断の目安となる指標のひとつであって、最終判断ではありません。

実際には、診断書や病歴・就労状況等申立書などに記載された内容を総合的に考慮して等級が決まります。そのため、目安の表では「2級に該当している」場合でも、最終的には「3級」と認定されることもあります。

「目安」という言葉のとおり、障害等級の表はあくまでも参考基準です。最終的には“総合評価”ですので、目安だけに頼らず、すべての書類を丁寧に準備することが大切です。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

また、障害年金の審査においては、「総合評価の際に考慮すべき要素の例」として、5つの分野(①現在の病状又は状態像、②療養状況、③生活環境、④就労状況、⑤その他)において、考慮すべき要素と具体的な内容例が示されています。

①現在の病状又は状態像

  • 知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は、それを考慮する。
  • 不適応行動を伴う場合に、診断書の「現在の病状又は状態像」欄に合致する具体的記載があれば、それを考慮する。
  • 臭気、光、音、気温などの感覚過敏があり、日常生活に制限が認められれば、それを考慮する。

②療養状況

  • 著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況も考慮する。

③生活環境

  • 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時個別の援助を受けている場合は、1級または2級の可能性を検討する。
  • 入所施設において、常時個別の援助が必要な場合は、1級の可能性を検討する。

④就労状況

  • 労働に従事していることをもって、ただちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
  • 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、以下のような状況にある場合には2級の可能性を検討する。
    ・仕事の内容が保護的な環境下でのもっぱら単純かつ反復的な業務である
    ・執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合
    ・他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合

⑤その他

発育・養育歴、教育歴、専門機関による発達支援、発達障害自立訓練等の支援などについて、考慮する。

上記は「総合評価の際に考慮すべき要素」のうち、発達障害の等級判定に関わる内容を参考にしたものです。

詳細については、こちらをご覧ください。

続いて、障害年金を受給した場合はいくらもらえるのか、障害年金の種類と年金額についてご説明します。

障害年金の金額

障害年金の金額

障害年金の種類と支給対象

障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初診日(※)に加入していた年金制度によって支給される障害年金が異なります。

障害基礎年金: 初診日に加入していた年金制度が「国民年金」の方

障害厚生年金: 初診日に加入していた年金制度が「厚生年金」の方

初診日とは?

障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日のこと。

障害年金の支給額

障害年金の額は、障害等級(1級・2級・3級)や初診日に加入していた年金制度(国民年金・厚生年金)によって異なります。

障害基礎年金は、1級・2級 があり、等級ごとに定額で支給されます。

一方、障害厚生年金は 1級・2級・3級 があり、年金額は「報酬比例の年金額」によって決まります。これは、加入期間中の標準報酬額や加入年数に応じて計算されます。加えて、障害厚生年金1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金もあわせて受け取ることができます。

例えば、障害基礎年金2級の場合、年額約80万円が支給されます。もし初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金2級に該当するため、報酬比例の年金額が上乗せされ、受給額はより高くなります。

また、配偶者の有無や子どもの数といった家族構成によっても年金額が変わることがあります。つまり、同じ等級であっても、受給できる金額には差が出る場合があるのです。

「実際にいくらもらえるのか」は気になるポイントですよね。詳しい金額や計算例については、以下の記事で解説していますので、ぜひそちらもご覧ください。

発達障害で障害年金を申請する際のポイント

発達障害で障害年金を申請する際のポイント

発達障害で障害年金を申請するには、単に診断名を伝えるだけではなく、どれほど生活に支障があるかを具体的に示すことが重要です。

ここでは、申請時に意識すべきポイントを解説します。

初診日の証明が重要

障害年金の申請では、「初診日」の証明がとても重要なポイントとなります。

初診日とは、障害の原因となる傷病について初めて医療機関を受診した日のことを指します。この日が特定できなければ、申請が却下される可能性もあります。

発達障害の場合、原則として、発達障害に関する症状で初めて医師の診療を受けた日が初診日とされます。最も一般的な証明方法は、初診の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらうことです。

ただし、初診が子どもの頃だったり、過去に別の精神疾患で精神科や心療内科を受診したことがあったりすると、当時のカルテがすでに破棄されていることもあります。

そのような場合は「受診状況等証明書」を作成してもらえないため、その他の資料(当時のお薬手帳や診察券など)を提出するなどし、初診日を証明する必要があります。

初診日の証明についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

発達障害の初診日と他の精神障害との関係

発達障害の初診日は、障害年金の申請において非常に重要なポイントですが、他の精神障害(うつ病、適応障害、知的障害など)と関係して、取り扱いが変わることがあるため注意が必要です。

発達障害と診断される前の精神疾患の受診日が初診日となる

発達障害の場合は、不眠や抑うつなどの症状を伴うことが多く、初診時に発達障害と診断されるとは限りません。治療を続けても症状が改善せず、転院や検査を経てようやく発達障害と診断されるケースも少なくありません。

この場合、多くは同一疾病として扱われるため、発達障害と確定診断される前であっても、最初に精神症状で受診した日が障害年金の「初診日」となります。

発達障害と他の精神障害の初診日

他の精神疾患の初診日が適用される

発達障害と「うつ病」「双極性障害」「適応障害」「パニック障害」など他の精神疾患を併発している場合、障害年金の申請では、より早い初診日が適用される可能性があります。

たとえば、先に「うつ病」で受診し、その後発達障害と診断された場合、多くは、うつ病の初診日が障害年金の「初診日」となります。

発達障害とうつ病の初診日

知的障害を伴う場合の初診日は「出生日」

同じ先天的な疾患であっても、発達障害単独の場合と、知的障害を伴う場合では、初診日の取り扱いが大きく異なります。

発達障害は発達の過程で症状が明らかになることが多いため、通常は「初めて医療機関を受診した日」が初診日となります。しかし、知的障害を伴う場合は、生まれつきの障害とみなされるため、初診日は原則として「出生日(誕生日)」となります。 これは、出生時に診断されていなかったとしても同じです。

発達障害と知的障害の初診日
ポイント

初診日が出生日になると、「障害基礎年金」の対象になります。

仮に成人後、厚生年金に加入している期間に初めて受診し、「知的障害を伴う発達障害」と診断された場合でも、原則として初診日は「出生日」となります。つまり、障害厚生年金ではなく障害基礎年金の対象となりますので注意しましょう。

診断書の内容

障害年金の審査では、診断書が最大の判断材料になります。

自分では症状を正確に把握できていなかったり、医師にうまく伝えられていなかったりすると、実際の状態よりも軽い内容で診断書が作成されてしまい、本来受けられるはずの等級に届かないケースもあります。

医師に診断書を依頼する際には、普段の生活でどのようなことが困難か仕事にどのような支障が出ているのかなど、できる限り具体的に伝えることが大切です。

発達障害のある方が日常生活で直面しやすい困難の例を挙げますので、参考にしてみてください。

  • 人とのコミュニケーションが難しい
  • 片付けや整理整頓が苦手で、生活環境が乱れやすい
  • 時間管理ができず、仕事が長続きしない
  • 金銭管理が苦手で、計画的にお金を使うことができない
  • 約束の時間を守れず、社会生活に支障をきたしてしまう
  • 職場で対人トラブルが多く、適応が難しい
  • 音や光、においなどに過敏に反応し、日常生活に強いストレスを感じる(感覚過敏)

発達障害のある方は、診察時にうまく話がまとまらなかったり、伝えたいことを整理できなかったりして、説明が不十分になってしまうことがあります。

そこで、自分の症状や日常生活で困っていること周囲からどのようなサポートを受けているかを、あらかじめメモにまとめておくことをおすすめします。診察時にそのメモを主治医に見せることで、生活の実態を伝えやすくなります。

また、ご家族と同居している場合には、どのような場面で家族が声かけや手助けをしているかを整理しておくことも有効です。たとえば、服薬の声かけやスケジュール管理の補助など、支援がないとどのような問題が起こるのかを具体的に説明することで、より実態が伝わりやすくなります。

短い診察時間内に、症状を詳しく医師へ伝えるのはとても難しいですよね。事前にメモを用意したり、ご家族に代わりに伝えてもらったりすることで、主治医にも日常生活の実情がより伝わりやすくなりますよ。

障害年金業務責任者綾部真美子

障害年金業務責任者
綾部真美子

病歴・就労状況等申立書の作成

病歴・就労状況等申立書は、申請者の日常生活の状況やこれまでの経緯を詳しく説明する書類です。 障害年金の審査では、診断書の内容を補完する重要な資料となり、申請者の生活実態を伝える役割を果たします。

この書類は、申請者本人やご家族が作成するほか、社会保険労務士が代筆を行うことも可能です。

発達障害の方の場合、生まれた日から現在に至るまでを時系列に沿って、日常生活状況や就労状況を記載する必要があります。

作成時には、できるだけ具体的かつ客観的な表現を心がけましょう。障害年金の審査は書類のみで行われるため、具体的なエピソードや事例を盛り込むことで、審査員がより正確に申請者の状況を理解しやすくなります。

具体的には、次のような内容を記載します。

  • 幼少期・就学期の様子(集団行動が苦手だった、忘れ物が多かった など)
  • 特別支援教育歴(特別支援学校、支援学級の利用 など)
  • 就労している(していた)場合の状況(仕事内容や職場で受けた配慮 など)
  • 日常生活で特に支障を感じる場面(食事、移動、コミュニケーション など)
  • 家族や周囲からのサポートの内容
  • 福祉サービスの利用状況(訪問介護、ヘルパーの利用など)

病歴・就労状況等申立書では、日常生活や仕事にどのような支障があるのかを具体的に伝えることが重要です。 そのため、できることよりも「できないこと」「困っていること」に焦点を当てて記入することが求められます。

過去の辛い経験を振り返ったり、「できないこと」を書き出していく作業は、精神的に負担を感じることがあるかもしれません。そのような場合は、社労士などの専門家に代筆を依頼するのもひとつの方法です。 

病歴・就労状況等申立書の作成では、「過去の病歴を整理する」「できないことを具体的に書き出す」といった作業で、多くの方が行き詰まったり、精神的な負担を感じたりします。

そのようなときは、無理をせず専門家に任せることで、心の負担もかなり軽くなりますよ。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

働いていても受給できる

障害年金は、働いていても受給することは可能です。ただし、就労していると、「日常生活能力や労働能力がある」と見なされ、障害の程度が軽く判断される傾向にあります。

そのため、申請の際には、仕事の種類や内容、就労状況、職場で受けている援助の内容、周囲とのコミュニケーションの状況などを具体的に伝えることが重要です。障害者雇用や就労継続支援事業所などで働いている場合には、それ自体が配慮を受けている証拠にもなるため、診断書に必ず記載してもらいましょう。

また、会社から配慮を受けている短時間勤務やパート・アルバイト勤務のような場合は、受給の可能性があります。以下のような配慮を受けている場合は、申請書類に就労状況を具体的に記載することが重要です。

  • 業務内容は、単純作業や反復的な作業に限定されている
  • 指示は口頭ではなく、マニュアル書が用意されている
  • 集中力が続きやすいように、一定時間ごとに休憩がある
  • 周囲との距離や仕切りを設け、静かな場所で作業できる
  • 急な予定変更を避け、スケジュールを事前に共有している
  • 通勤による負担を減らすために、時差出勤や在宅勤務が選べる
  • 定期的に面談を設け、不安や困りごとを話しやすい環境がある

20歳から申請できる

障害年金は、通常、初診日から1年6カ月を経過した「障害認定日」を基準に審査が行われます。しかし、20歳より前に初診日がある場合、障害認定日は「20歳に達した日」となることがあります。

つまり、20歳の時点で障害の程度が認定基準に該当すれば、20歳から障害基礎年金を受給することが可能です。 申請時には、20歳時点の診断書が必要となるため、事前に医師と相談し、準備を進めておくことが大切です。

20歳前傷病による障害認定日

定期的な通院や服薬の必要がない方の中には、かかりつけ医がいない場合もあると思います。障害年金の申請を考えている場合は、高校在学中など早い段階から診断書を依頼できる医師を見つけておくとスムーズです。

さらに、1回の受診だけでは医師が症状を十分に把握することが難しいため、20歳になる前に何度か通院し、主治医としっかりコミュニケーションを取っておくことをおすすめします。

障害年金の申請手続きの流れ

障害年金の申請手続きの流れ

発達障害で障害年金を申請する手続きの流れは以下のとおりです。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、事前に申請の流れを理解しておけばスムーズに進めやすくなります。

STEP1. 初診日を特定する

最初に行うべきことは、初診日の特定です。初診日が分からないときは、医療機関に問い合わせてみましょう。

STEP2. 保険料の納付要件を確認する

障害年金は、年金保険料を一定期間以上納付している必要があります。過去に年金を納めていない期間がある方は、年金事務所で保険料納付要件を満たしているか、確認しましょう。

STEP3. 必要書類の準備

障害年金の申請に必要な書類を準備します。主な書類は以下の通りです。

  • 受診状況等証明書:初診日を証明するための書類。
  • 診断書:発達障害の症状や日常生活への影響を記載した医師の診断書。
  • 病歴・就労状況等申立書: 自身の症状の経過や就労状況を詳細に記載した書類。
  • 年金請求書:障害年金を請求するための必要事項を記載した書類。
  • その他添付書類:預金通帳のコピーなど。

STEP4. 書類の提出

必要書類が揃ったら、年金事務所などに提出します。提出後、日本年金機構による審査が行われます。審査期間は通常3か月程度です。

発達障害で障害年金が不支給になるケース

発達障害で障害年金が不支給になるケース

障害年金を申請しても、必ずしも受給できるとは限りません。ここでは、代表的な不支給の理由について解説します。

①障害の程度が軽いと判断された

障害年金は、障害認定基準による障害等級に該当しない限り、支給されません。実際の症状が重くても、医師にうまく伝わっていない場合は、診断書の内容が軽く作成されてしまうことがあります。

発達障害の方は、コミュニケーションが苦手で、自分の状態をうまく伝えられないことも少なくありません。受診時には、症状や困っていることをあらかじめメモにして主治医に渡したり、家族に代わりに説明してもらったりすることもひとつの方法です。

②申立書の内容が不十分、または診断書と矛盾している

病歴・就労状況等申立書は、出生日からこれまでの経過や通院歴、就労状況などを詳細に伝える重要な書類です。しかし、ここで「できること」ばかりを記載してしまうと、審査側に症状が軽いと判断されてしまう可能性があります。

また、診断書と申立書の内容に矛盾があると、審査上の信頼性が損なわれてしまいます。診断書の内容と整合性がとれているかも重要なポイントです。

これらの理由で不支給となり、再申請の相談を受けるケースは非常に多いです。再申請をしたとしても、受給のハードルはさらに上がってしまいます。だからこそ、最初の申請でしっかりと準備することが何より大切です。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

発達障害で障害年金が不支給になってしまったとき

発達障害で障害年金が不支給になってしまったとき

障害年金を申請した結果が不支給となった場合、まずはその理由をきちんと理解し、適切な対策を取ることが重要です。

①不服申立て(審査請求・再審査請求)

障害年金を申請した結果が不支給だったり、決定した等級に納得がいかなかったりするときは「不服申立て」をすることができます。

ただし、一度決定された結果をくつがえすためには、審査をする側が納得できるような客観的な証拠や資料を提出することが求められます。

どの点を立証すれば不服が認められるのかを明確にし、適切な書類を整えて進めていくことが重要です。また、手続きには時間的な制約もありますので、速やかに対応する必要があります。

②再申請(再請求)

障害年金は、不支給になっても「再申請」をすることが可能です。その場合は、診断書などの申請書類を一から取得しなおし、改めて申請の手続きを行います。

ただ同じように再申請してもまた不支給となってしまう可能性が高いため、不支給の理由を確認し、その理由に基づいて適切な対策を取ることが必要です。

障害年金が不支給だったとしても、不服申立てや再申請をすることで、支給決定につながる可能性があります。しかし、どちらにしても支給が認められることは容易ではなく、一回目の手続きよりも入念な準備が必要になります。

まとめ

発達障害がある方も、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。

ただし、単に「発達障害と診断された」というだけでは支給されず、審査では日常生活や社会生活にどれほど支障があるかが重視されます。そして、その実態が診断書や申立書などの書類に、どれだけ具体的に反映されているかが非常に重要です。

中でも診断書は、障害年金の可否を左右する最も重要な書類です。医師に自身の困りごとを正確に伝え、生活や仕事上の困難さがきちんと記載されるようにしましょう。

発達障害は、大人になってから気づかれることも少なくありません。現在働いている方でも、周囲の配慮を受けながら仕事をしている場合は、障害年金の対象となる可能性があります。

日々の生活や仕事に困難を感じている方は、障害年金という制度を選択肢のひとつとして、ぜひ検討してみてください。

この記事が、障害年金の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

障害年金の手続きは、お一人おひとりの状況に応じて進め方が異なります。

当事務所では、発達障害のある方の申請を数多くサポートしており、初回相談は無料で承っております。実際にご依頼いただくかどうかは、相談後にじっくりご検討いただけます。どうぞ安心してご連絡ください。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

発達障害で障害年金を申請するときのよくある質問

Q 障害年金は発達障害だけではもらえませんか?

いいえ。障害年金は「発達障害だけだともらえない」ということはありません。当事務所でも、発達障害だけの診断で障害年金が受給された事例は多くあります。

しかし、発達障害と診断されたから受給できるわけではなく、症状の重さ、日常生活や就労への影響などをふまえて、審査が行われます。

Q 発達障害で障害年金をもらうのは難しいですか?

発達障害の方が、障害年金を受給することは可能です。ただし、「初診日」を証明するのが難しいケースも多く見られます。

発達障害は、幼少期に診断を受けていたり、かなり前に精神科などを受診していたりすることが多く、当時の医療機関にカルテが残っていない場合もあります。

将来的に障害年金の申請を検討している方は、早めに「受診状況等証明書」を取得しておくと安心です。

Q 子供でも障害年金はもらえますか?

いいえ。発達障害と診断されたとしても、20歳未満の方は障害年金を受け取ることはできません。障害年金は原則として、20歳以上の方が対象です。

そのため、20歳の誕生日を迎えるタイミングで申請できるよう、診断書の準備や主治医との相談など、事前の準備を進めておくことをおすすめします。

Q 発達障害とうつ病を併発している場合、どちらの病気で申請するのが有利ですか?

ADHDやASDなどの発達障害をお持ちの方は、その特性によって対人関係や仕事でのストレスが蓄積し、結果的にうつ病などの精神疾患を併発するケースが少なくありません。

このような場合、障害年金の審査では、発達障害とうつ病の症状を総合的に判断して等級が決定されます。そのため、診断書や病歴・就労状況等申立書には、発達障害とうつ病の両方の症状が適切に記載されていることが重要です。

 

Q 発達障害で障害者手帳の3級を持っています。障害年金も3級になりますか?

障害年金と障害者手帳は全く別の制度であり、審査の基準も異なります。そのため、障害年金が障害者手帳と同じ等級に認定されるとは限りません。また、障害年金は、障害者手帳を持っていなくても受給できます。

Q 発達障害で過去に遡って請求はできますか?

障害年金は、一定の条件を満たせば、障害認定日にさかのぼって請求(遡及請求)することも可能です。

ただし、障害年金には時効があり、過去にさかのぼって年金を受給できる期間は、5年が限度です。申請が遅れると、その分もらえるはずの年金が時効により消滅してしまいますので、早めに申請することをおすすめします。

Q 障害年金を受給するデメリットはありますか?

障害年金を受給すること自体に、大きなデメリットはありません。

生活保護や傷病手当金など他の公的制度と併用している場合は、支給額の調整が行われることがありますが、それでも全体の収入が減るわけではありません。

▼詳しくはこちらの記事をご覧ください
うつ病で障害年金を受給するメリット・デメリット|精神疾患による障害年金専門の社労士がわかりやすく解説

Q 発達障害で障害年金の申請をして落ちた場合、どうすればいいですか?

障害年金を申請した結果が不支給となった場合でも、すぐに諦める必要はありません。不支給の理由を確認し、不服申立て(審査請求)や再申請などの対応を検討しましょう。

適切な対策を取ることで、支給決定につながる可能性もあります。困ったときは専門家である社労士に相談することも有効な方法です。

発達障害における当事務所の受給事例

幼少期から不注意や多動、読み書きの困難があり、20歳前から通院を続けてきたK様。ご家族のサポートなしでは生活が難しい状況でした。お母様が将来の自立を考え、障害年金を検討。遡及請求が認められ200万円の一時金と障害基礎年金2級の受給につながった事例です。

A様は、発達障害(ADHD、ASD)を抱えており、日常生活に大きな困難を感じていました。医師から障害年金の申請を勧められたものの、「病歴就労状況等申立書」の作成ができず、手続きを断念しかけていました。当事務所がサポートを行い、無事に障害基礎年金2級の受給が決定しました。

幼少期から生きづらさを抱え、発達障害(ASD、ADHD)と診断されたT様の障害年金申請をサポートした事例です。ご主人からの情報も交えた丁寧なヒアリングを行い、障害基礎年金2級が決定しました。

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発達障害で障害年金はもらえる?申請方法・認定基準・不支給ケースを解説

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