うつ病などの精神疾患を抱えて、働きたくても働けずに困っている人たちに向けて障害年金の請求代行サポートを開始。
現在は、社会保険労務士5名、日本年金機構勤務経験者4名、医療機関勤務経験者1名の専門チームで、全国のうつ病等で悩む方々の障害年金請求手続きを支援している。
[うつ病などの障害年金請求代行]
障害年金は、うつ病などの精神的な疾患を抱える方にとって、重要な支援制度です。
経済的なサポートを受けられるなど多くのメリットがある一方、何かデメリットはないのか心配になるかもしれません。
結論からいうと、障害年金を受給するメリットを上回るほどのデメリットは存在しません。
ただし、制度上気をつけておきたいポイントがありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
この記事では、うつ病の方が障害年金を受給する際のデメリットについて解説し、あわせて、障害年金のメリットについても紹介します。申請(請求)を検討されている方はぜひ参考になさってください。
また、障害年金をよく知らないという方のために、障害年金の基本についても解説します。すでにある程度概要を理解されている方は、デメリットの記事から読み進めてください。
障害年金とは、公的な年金制度のひとつです。
年金というと、老後の生活を支える「老齢年金」のイメージがありますが、障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
ほとんどの病気やケガが対象となり、うつ病などの精神疾患も含まれます。
障害年金の受給には、3つの条件を満たしている必要があります。
■1級■(障害基礎年金・障害厚生年金)
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。
■2級■(障害基礎年金・障害厚生年金)
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
■3級■(障害厚生年金)
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
障害年金には、「障害基礎年金」、「障害厚生年金」の2種類があります。
を請求することになります。
※ちなみに、国民年金の被保険者とは、20歳以上の無職や学生や自営業(第1号)・扶養されている配偶者(第3号)であり、厚生年金の被保険者とは、会社員や公務員等(第2号)です。
国の公的年金制度は2階建てになっていて、1階部分が「基礎年金」、2階部分が「厚生年金」となっています。
金額は年度ごとに変動します。下記は、令和6年度の金額になります。
■障害基礎年金■
障害基礎年金は、1級・2級があり、年金額は障害等級ごとに定額です。
1級…1,020,000円(月額)+ 子の加算(※1)
2級…816,000円(月額)+ 子の加算 (※1)
(※1)18歳年度末までの子どもがいる場合は、子の加算が支給されます。
子の加算額…第1子・第2子 各234,800円、第3子以降 各78,300円
障害基礎年金に3級はなく、障害等級は1級と2級のみですので、注意しましょう。
■障害厚生年金■
障害厚生年金は、1級・2級・3級があり、加入期間や支払った保険料によって人それぞれ異なる報酬比例の年金額になります。障害等級が3級の場合は、障害厚生年金だけが支給され、障害等級が1級、2級の場合は、障害基礎年金も支給されます。
1級…報酬比例の年金額 ×1.25 + 配偶者の加給年金額(※2)+ 障害基礎年金1級
2級…報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(※2) + 障害基礎年金2級
3級…報酬比例の年金額(最低保証額612,000円)
(※2) 配偶者が65歳未満の場合、配偶者の加給年金が支給されます。
配偶者の加給年金額…234,800円
障害年金の受給により、以下の制度の支給額が調整されることがあります。
ただし、いずれの制度においても調整後に収入が減ってしまうことはありません。障害年金と合わせて同じ額、または制度によっては少し多くもらえるように調整されます。
1級又は2級の障害年金を受けている方は、国民年金保険料の法定免除を受けることができます。この場合、法定免除となった期間は国民年金保険料が全額免除され、年金保険料の半額を納付した扱いとなります。
全額納付した場合に比べて、将来の老齢基礎年金の受給額が減ることになります。
とはいっても、任意で保険料を納付することはできますし、免除の金銭的メリットは大きいので、一概にデメリットとは言えないでしょう。
死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間が3年以上ある方が死亡したときに、その人と生計を同じくしていた遺族に支給される一時金です。
寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた期間(免除期間含む)が10年以上ある夫を亡くした妻に対して60歳から65歳まで支給される年金です。
障害基礎年金を受け取っていた方が亡くなった場合は、死亡一時金や寡婦年金は支給されません。しかし、どちらも障害年金の支給額の方が多いため、大きなデメリットではありません。
傷病手当金を申請する際、申請書類に障害年金の受給を申告する項目があるため、勤務先に知られる可能性があります。
ただし、自ら勤務先に申告する義務はありません。年末調整などで知られることもありません。また、収入が障害年金のみの場合は、確定申告も必要ありません。
障害年金は非課税ですが、健康保険の扶養の計算では収入に加算されます。障害年金と他の収入の合計が180万円以上になると、扶養から外れることになります。
他の収入がある場合は注意が必要ですが、障害年金だけで扶養から外れることはほぼ無いでしょう。
一定の条件を満たす老齢厚生年金受給者に、65歳未満の配偶者がいる場合は配偶者加給年金を受給することができます。
ただし、配偶者自身が障害年金を受けている期間は、加給年金は支給されません。
配偶者加給年金が停止されても、障害年金の支給額の方が多いので、世帯としての収入は増えます。障害年金を受給するうえでの大きなデメリットにはならないでしょう。
障害年金の手続きはとても複雑なため、書類の取得や作成にかなり時間がかかる場合があります。ご自身で申請する場合は、複数回、年金事務所や医療機関に足を運ぶ必要もあるでしょう。
また、申請書類の一つである「病歴・就労状況等申立書」の提出は必須です。この書類には、病気を発症した原因や現在までの経緯などを書く必要があります。
うつ病は、大きなショック体験や継続的なストレスが原因で発症することがありますので、この書類の作成途中で辛い過去を思い出して、体調が悪化してしまうことも考えられます。
もし、ご自身での申請が負担に感じる場合は、ご家族やご友人、社労士などの専門家に相談することをおすすめします。
うつ病などの精神的な疾患によって働くことが困難になり収入が減少すると、金銭的な不安からさらに症状が悪化してしまうこともあります。
障害年金を受け取ることで、金銭的な不安が和らぎ、日常生活の安定を支える助けとなります。また、定期的な収入があることで、治療に専念することもできるでしょう。
障害年金は、2か月に1度、2か月分が、口座に振り込まれます。
障害年金は非課税所得に分類されるため、所得税や住民税がかかりません。
一方、老齢年金は課税所得です。収入に応じて税金を納める必要がありますので、注意しましょう。
1級又は2級の障害年金を受けている方は、国民年金保険料の法定免除を受けることができます。
この場合、法定免除となった期間は国民年金保険料が全額免除されますが、計算上は半額納付したものとして将来の老齢基礎年金の額に反映されます。
デメリットでも挙げましたが、その分、老齢基礎年金は減額されてしまいます。ただし、老齢年金を満額で受け取りたい方は、任意で保険料を納めることも可能です。
法定免除を利用して「今」の負担を軽くするか、法定免除を利用せずに国民年金保険料を支払って「将来」に備えるかは、ご自身の判断で選ぶことができます。
障害年金の使い道は限定されていないため、必要に応じて自由に使用することができます。治療費以外に、生活費や貯蓄に回すことも可能です。
これに対して、生活保護を受給した際は、所有できる資産に制限がかかります。また、仕事で得た収入によっては支給額が減額や支給停止になるなど、さまざまな制約があります。
障害年金の場合は、資産や収入があったり、身内や親族からの援助があったりしても減額されずに受給することが可能です。
障害年金は、働きながらでも受け取ることができます。
障害年金を受給しながら働くことは、経済的な面だけでなく、精神的な面や社会的なつながりを保つという利点もあります。一定の収入があることで、パートタイムや在宅勤務など、自分のペースに合わせた働き方を選択することも可能になります。
ただし、働き方によっては障害年金を受給できないケースもあります。特に精神障害においては、就労状況が障害年金の審査に大きく影響します。
障害年金を請求しても不支給になったり、更新の際に年金が支給停止になったりする可能性があります。
障害年金を受給するメリットは大きく、デメリットをはるかに上回ります。デメリットを心配して障害年金の申請を悩んでいる方は、迷わず申請されることをおすすめします。
ただし、障害年金の手続きは複雑です。もし、ご自身やご家族での手続きが難しいと感じたら、社労士などの専門家へ相談してみましょう。
うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患は障害年金の対象傷病です。
しかし、申請したら必ず受給できる訳ではありません。その病気によって日常生活や労働にどれだけ支障があるかを審査され、障害の等級や支給不支給が決定されます。
つまり、同じ「うつ病」と診断されていても、症状によって障害年金を受け取れる方とそうでない方がいます。
適応障害や不安障害、パニック障害、強迫性障害などは神経症に分類されます。うつ病などの精神病とは異なり、原則として障害年金の対象にはなりません。
ただし、認定基準によると「臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う」となっています。
適応障害などの診断を受けている方は、医師にうつ病などの精神病を併発していないか確認しましょう。もし併発している場合は、それを診断書に反映してもらうことで、障害年金を受給できる可能性があります。
うつ病は、発達障害や知的障害など他の障害と併発することが少なくありません。このような場合、うつ病とこれらの障害は関連し一つの疾患として捉えられます。
うつ病単独の場合と、うつ病と他の障害を合わせた場合では、初診日が異なることがあります。それによって、受給できる年金の種類や金額が変わることがありますので、注意しましょう。
原則として、精神的な問題で初めて医療機関を受診した日が「初診日」となります。精神疾患の場合、医師の変更や症状の変化によって診断名が変わることがよくあります。
たとえば、初診の医療機関では「パニック障害」と診断され、現在かかっている医療機関では「うつ病」と診断されている場合、初診日は「パニック障害」と診断された医療機関を受診した日になります。
初診日を証明するためには、初診の医療機関で「受診状況等証明書」という書類を作成してもらう必要があります。しかし、うつ病の方は病歴が長いことが多く、初診日からかなりの時間が経過している場合があります。そのため、最初の医療機関が閉院していたり、カルテが廃棄されていたりすることがあります。このような場合には、その他の資料(当時のお薬手帳や診察券など)を提出するなどし、初診日を証明する必要があります。
初診日を確定することは障害年金の申請において非常に重要です。もし初診日の確定が難しいと感じた場合は、社労士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
障害年金の請求に、障害者手帳は必要ありません。障害年金と障害者手帳は、全く別の制度であり、判定の基準も異なります。
例えば、精神障害者保健福祉手帳2級を持っていても、障害年金が2級に認定されるとは限りません。
障害者手帳の等級と障害年金の等級は必ずしも一致するわけではないことを覚えておきましょう。
障害年金の審査で最も重要なのは「診断書」です。うつ病は外見から症状がわかりにくいため、医師に障害の程度が正しく伝わっていないことがあります。その結果、診断書の内容が実際の障害の程度よりも軽く記載されてしまうことがあります。
診断書を依頼する前に、具体的にどのような症状があるのか、またその症状が日常生活や仕事にどのように影響しているのかをできるだけ詳しく主治医に伝えることが重要です。
障害年金は、働きながらでも受け取ることができます。
精神障害による障害年金受給者の中で、約3人に1人が働いており、当事務所でも、働きながら受給した事例は多くあります。
しかし、精神障害においては、見た目や検査数値から症状の重さを判断できないため、就労状況は審査に大きく影響します。
働いている場合は、仕事内容に制限があるか、職場でどのような配慮を受けているかなどを、請求書類に記載することが重要です。
特に、一般企業の障害者雇用、就労継続支援事業所で働いている場合にはその点も伝えましょう。