
社会保険労務士
梅川 貴弘
うつ病などの精神疾患を抱えて、働きたくても働けずに困っている人たちに向けて障害年金の請求代行サポートを開始。
現在は、社会保険労務士6名、日本年金機構勤務経験者4名の専門チームで、全国のうつ病等で悩む方々の障害年金請求手続きを支援している。
[うつ病などの障害年金請求代行]
「生活保護と障害年金は一緒にもらえる?」「生活保護と障害年金はどっちが得なの?」
などのように、生活保護と障害年金はどのように違うのか、両方受け取ることは可能なのかといった疑問を持つ方は多いでしょう。
本記事では、それぞれの制度の違いや、同時受給する場合のメリット・デメリットについて詳しく解説します。特に、うつ病などの精神疾患で働くことが難しい場合、どのように制度を活用できるのかについても説明します。
また、記事の中では、社労士に障害年金の申請(請求)を依頼する際の、自治体による費用負担に関する情報も紹介します。この記事が、生活保護と障害年金を活用し、適切な支援を受けるための一歩につながれば幸いです。
目次
障害を抱えた方が受けられる公的な支援制度として、生活保護と障害年金があります。
この2つの制度はよく混同されがちですが、目的や支給条件が異なり、性質にも大きな違いがあります。
生活保護は、経済的に困窮している方に対して、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度です。
上記4つの条件を満たし、さらに世帯収入の合計が、最低生活費を下回っている場合に支給されます。
厚生労働省が定めた最低生活費が支給されます。最低生活費は「住んでいる地域、年齢、家族構成、健康状態」などによって異なります。
例えば、東京都内で単身世帯の場合、月額13万円程度になります。
生活保護は、収入がある場合は、最低生活費と収入を比べて、不足している分が支給されます。つまり、パート・アルバイトなどで得た収入があれば、それらの金額を差し引いて生活保護費が支給されます。また、収入は給与だけでなく、年金や児童手当など他の制度で給付されるものも含まれます。
また、財産の制限もあります。生活保護の受給者は最低限度の生活を行うことが求められ、資産価値のある土地や、家屋、車などは所有できません。
生活保護は「世帯単位」で行われます。これは、生活保護は、世帯全員がそれぞれの資産や能力を活用して、最低限の生活を維持することを前提としているためです。
収入の判断は世帯単位となるため、同居している家族の収入が増えると、減額や支給停止になる場合があります。
障害年金は、病気やけがを理由に生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
対象となる病気やけがは、手足の障害などの外部障害のほか、うつ病、発達障害などの精神障害、がんなどの内部障害も対象になります。
障害等級や年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金)によって異なります。例えば、障害基礎年金2級に認定された場合、年間約80万円(月額約6万5千円)が支給されます。
障害年金は基本的に収入制限はありません。資産や収入があったときや、身内や親族からの援助があったときでも減額されずに受け取ることができます。
また、障害年金は働きながらでも受け取ることができます。体調が多少回復して就労を開始した場合でも、次回の更新期限までは、減額や支給停止にはなりません。
※ただし、20歳前に初診日がある障害基礎年金については、収入制限があります。
うつ病などの精神疾患の場合、症状の波があり、一時的に働けるようになっても再び体調が悪化することがあります。
障害年金を受給していると、無理のない範囲で働きながら治療を続けることができるため、精神的な負担を軽くすることができます。
社会保険労務士
梅川 貴弘
障害年金は「個人単位」で支給されるため、家族に資産、収入があっても受給が可能です。
生活保護と障害年金は同時にもらうことが可能です。しかし、両方を満額で受け取れるわけではなく、生活保護費の金額が調整される仕組みになっています。
生活保護は、他に収入がある場合は、その分だけ生活保護費が減額されるルールがあります。障害年金も「収入」とみなされるため、障害年金を受給すると、その分生活保護費が差し引かれる形になります。
支給される生活保護費 = 最低生活費 - 障害年金
例えば、生活保護による最低生活費が10万円の場合、障害年金を6万円受給すると、生活保護費は4万円に減額されます。
つまり、生活保護と障害年金を併給しても、手元に入る総額は基本的に変わりません。
※障害年金が最低生活費を上回る場合は、生活保護は打ち切りとなります。
生活保護を受給している場合は、最終的に受け取る金額が変わらないため、障害年金を受給するメリットはないと思われるかもしれません。
しかし、この場合でも障害年金を受給するメリットがあります。
①障害者加算
障害年金1級または2級を受給している場合、生活保護に「障害者加算」がつきます。この加算により、通常の生活保護よりも多くの支給を受けることが可能です。支給額は、月額1~3万円程度であり、具体的な金額や条件は地域によって異なります。
障害年金3級の場合は加算されませんので、注意しましょう。
②自立を目指す
障害年金は、就労によって減額されることがない点も大きなメリットです。生活保護は収入が増えるとその分減額されますが、障害年金は働いても減ることはありません。そのため、将来的に生活保護に頼らず生活できるようになりたいと考える場合、障害年金を受給しながら働くことで、自立を目指しやすくなります。
①収入は増えない
障害年金を受給すると生活保護費が減額されるため、実際に手元に入る総額は変わらない点はデメリットとも言えます。障害年金の手続きには多くの書類が必要で、手間や負担がかかります。しかし申請が認められたからといって、単純に収入が増えるわけではありません。
②生活保護費の返還が必要
障害年金を遡及請求した場合には注意が必要です。
遡及請求が認められると、過去にさかのぼって障害年金を受給できますが、その期間に生活保護を受給していた場合は、障害年金と重複している分の生活保護費を返還しなければなりません。
突然多額の返還を求められるケースもあるため、遡及請求を考えている場合は事前に自治体や社労士に相談することをおすすめします。
社会保険労務士
梅川 貴弘
障害年金の申請は、必要書類の準備や診断書の内容確認など、専門的な知識が求められるため、個人で手続きを進めるのが難しい場合があります。
そこで、社会保険労務士(社労士)に依頼する方法がありますが、その際には社労士への報酬が発生します。報酬額は通常、年金額の数か月分となる場合が多く、この費用が申請者の負担になります。
しかし、一部の自治体では、障害年金の申請を社労士に依頼する際に、かかる費用を必要経費として負担してくれることがあります。この場合、社労士に代行を依頼しても実質的な自己負担がありません。具体的な条件等は自治体によって異なりますので、担当のケースワーカーさんに確認してみるとよいでしょう。
また、障害年金の申請には、医師の診断書などの書類が必要になります。通常、診断書の発行には医療機関に支払う診断書代などの費用がかかりますが、生活保護利用者の場合は、この費用が自治体によって負担されることがあります。この点も、事前にケースワーカーさんに確認しておくと安心です。
もし、生活保護利用者の方が、こうした費用負担をしてくれる市区町村にお住まいの場合、金銭的な負担なく社労士に依頼できますので、ぜひ申請を検討されることをおすすめします。
ただし、市区町村によっては費用負担が認められない場合もあります。その場合は、残念ながら当事務所での対応はできません。
障害年金の申請を検討している方は、まずは福祉窓口や担当のケースワーカーさんに相談してみましょう。
社会保険労務士
梅川 貴弘
生活保護と障害年金は、条件を満たせば同時に受給することが可能です。
ただし、金額が調整されるため、手元に入る総額は基本的に変わりません。しかし、障害年金を受給すると生活保護の「障害者加算」がつくことや、就労によって減額されないなどのメリットがあります。
また、うつ病などの精神疾患で働くことが難しい場合、生活保護を受給しながら障害年金の申請を進めることも選択肢のひとつです。障害年金は審査に時間がかかることがあるため、生活費を確保しながら申請の準備をすることが大切です。
生活保護と障害年金を併給することで得られるメリットとデメリットを理解し、自分に合った制度を適切に活用することで、より安定した生活を送ることができます。困ったときは専門家や自治体の窓口に相談し、サポートを受けながら手続きを進めていきましょう。
一般的には、まず障害年金の申請を優先することが推奨されます。障害年金は就労しても減額されないため、将来的な自立を考えたときに有利です。一方、生活保護は収入が増えるとその分減額されるため、長期的に見て選択肢が狭まる可能性があります。
また、申請から支給開始までの期間にも違いがあります。生活保護は申請後、審査が通れば比較的早く支給が開始されることが多く、早ければ1ヶ月以内に受給できます。一方、障害年金は申請から決定まで数ヶ月かかることが多く、入金まで半年以上かかる場合があります。そのため、すぐに生活費が必要な場合は、まず生活保護を申請するという方法もあります。
生活保護と障害年金は、それぞれ一定の条件を満たしている限り受給できますが、一生もらえるとは限りません。
生活保護は「最低生活費を下回る収入しかないこと」が条件となるため、収入が増えたり、資産状況が変わったりすると支給が停止されることがあります。
障害年金は「障害の状態が一定以上であること」が受給の条件となります。障害の状態によっては有期認定(数年ごとに更新が必要)になり、更新時の審査で「障害の程度が軽くなった」と判断されると、支給停止や減額となることがあります。一方、永久認定(障害の状態が固定され、更新の必要がない状態)を受けた場合は、一生受給できる可能性もあります。
障害年金を受給しただけでは生活保護が打ち切られることはありません。
ただし、障害年金の受給額が生活保護の最低生活費を上回る場合は、生活保護の対象から外れることになります。また、就労によって収入が増え、世帯全体の収入が最低生活費を超えた場合も、生活保護が停止される可能性があります。
障害者手帳は、障害年金の申請に必須ではありません。
障害年金と障害者手帳は全く別の制度であり、障害者手帳を持っていなくても、障害年金を受給することは可能です。両制度は審査の基準も異なるため、障害者手帳を持っている場合でも、障害年金が同じ等級に認定されるとは限りません。
障害者手帳があるからといって、必ず生活保護を受けられるわけではありません。
生活保護は、収入や資産が一定以下であることが条件となるため、障害者手帳の有無だけでは支給の可否は決まりません。ただし、障害者手帳を持っていると「障害者加算」が適用され、通常の生活保護費よりも多く受給できる場合があります。自治体によって加算の条件が異なるため、詳細はケースワーカーさんに相談するとよいでしょう。
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