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[うつ病などの障害年金請求代行]

障害年金の「事後重症請求」とは?手続きの流れと知っておきたい注意点

  • 投稿:2025年06月24日
  • 更新:2025年07月03日
障害年金の「事後重症請求」とは?手続きの流れと知っておきたい注意点

「障害年金を申請したい」と思っても、制度が複雑で不安を感じる方も多いのではないでしょうか。事後重症請求は、症状が後から悪化した場合の手続きです。

この記事では、制度の概要や受給条件、年金額、注意点をわかりやすく解説します。

障害年金の請求方法とは?

障害年金の請求方法とは?

障害年金の請求方法には、大きく分けて「障害認定日請求」「遡及請求」「事後重症請求」の3つがあります。これらは、障害認定日を基準とし、障害の状態がいつから続いているか、また、請求するタイミングなどによって使い分けられます。

障害認定日とは?

障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日のことをいう。ただし、20歳前に初診日がある場合は、20歳に達した日が障害認定日となることがある。

初診日とは?

障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日のこと。

障害認定日請求

障害認定日請求とは、障害認定日時点で、法令に定める障害の状態にある場合、その認定日から1年以内に請求する方法です。

  • 障害認定日から3か月以内の診断書が必要
  • 障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができる

遡及請求

遡及請求とは、何らかの理由で障害認定日から請求をしないまま1年以上経過した後で、障害認定日時点にさかのぼって請求する方法です。

何らかの理由とは、例えば、障害認定日時点では障害年金が請求できることを知らなかったり、症状が重くて手続きできるような状態ではなかったりする場合です。

  • 障害認定日から3か月以内の診断書と現在(請求日)の診断書の2枚が必要
  • 障害認定日にさかのぼって受給権が発生する
  • 時効により、受け取ることができる期間は最大で過去5年分

事後重症請求

事後重症請求とは、障害認定日には障害の状態が軽かったけれど、その後症状が重くなり、法令に定める障害の状態に至ったときに請求する方法です。

  • 現在(請求日)の診断書が必要
  • 請求日の翌月分から年金を受け取ることができる

今回焦点を当てる「事後重症請求」では、請求を行った月の翌月分から障害年金が支給されることになります。したがって、障害が重くなったと感じた時点で、できるだけ早く手続きを開始することが大切です。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

事後重症請求の要件

事後重症請求の要件

事後重症請求が認められるためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。

①初診日の要件

原則として、障害の原因となった病気やケガで初めて病院に行った日(初診日)が年金制度の被保険者期間であること。ただし、初診日が20歳未満の方や60歳以上65歳未満で日本国内に在住されている方は、公的年金制度に加入していなくとも、問題ありません。

②保険料の納付要件

初診日の前日において、年金保険料を一定期間以上納付していること。具体的には、次のどちらかを満たしている必要があります。

  • 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上納付(または免除)していること。
  • 初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。

③障害状態の要件

請求時点において、障害年金の基準に定める程度の障害状態であること。

障害年金の審査は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて行われ、これには、障害の状態に応じた障害の程度(障害等級1~3級)が定められています。

■1級■(障害基礎年金・障害厚生年金)

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。

■2級■(障害基礎年金・障害厚生年金)

必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。

■3級■(障害厚生年金)

労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。

事後重症請求を選択するケース

事後重症請求を選択するケース

事後重症請求は、障害認定日には障害等級に該当しなかったが、その後症状が悪化し、現在は就労や日常生活に著しい支障が出ている場合に適用する方法です。

その他にも、以下のような状況に該当する方は、事後重症請求の対象となる可能性があります。

  • 障害認定日当時に通院していた医療機関が廃院していた、またはカルテが廃棄されており診断書を取得できない。
  • 障害認定日時点では通院していなかった。
  • 障害認定日当時通っていた医療機関の医師が、診断書の作成に応じてくれない。

このような場合、障害認定日時点の診断書を取得できないため、遡及請求はできません。

遡及請求が難しいと判断される場合には、速やかに方向転換して事後重症請求に切り替えることが賢明です。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

事後重症請求で受給できる年金額

事後重症請求で受給できる年金額

事後重症請求が認められると、年金は「請求した月の翌月分」から支給されます。

これはつまり、症状が重くなってもすぐに手続きをしなければ、年金を受け取れる開始時期が遅れてしまうということを意味します。そのため、障害の悪化に気づいた時点で、できるだけ早く請求手続きを検討しましょう。

障害年金の種類と支給対象

障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初診日に加入していた年金制度によって支給される障害年金が異なります。

障害基礎年金
初診日に加入していた年金制度が「国民年金」の方
障害厚生年金
初診日に加入していた年金制度が「厚生年金」の方

障害年金の支給額

国の公的年金制度は2階建てになっていて、1階部分が「基礎年金」、2階部分が「厚生年金」となっています。

金額は年度ごとに変動します。こちらは、令和7年度の金額になります。


■障害基礎年金■

障害基礎年金は、1級・2級があり、年金額は障害等級ごとに定額です。

1級
1,039,625円(年額)+ 子の加算(※1)
2級
831,700円(年額)+ 子の加算(※1)

(※1)18歳年度末までの子どもがいる場合は、子の加算が支給されます。
子の加算額:第1子・第2子 各239,300円、第3子以降 各79,800円


■障害厚生年金■

障害厚生年金は、1級・2級・3級があり、加入期間や支払った保険料によって人それぞれ異なる報酬比例の年金額になります。

障害等級が3級の場合は、障害厚生年金だけが支給され、障害等級が1級、2級の場合は、障害基礎年金も支給されます。

1級
報酬比例の年金額 ×1.25 + 配偶者の加給年金額(※2)+ 障害基礎年金1級
2級
報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(※2) + 障害基礎年金2級
3級
報酬比例の年金額(最低保証額623,800円)

(※2)配偶者が65歳未満の場合、配偶者の加給年金が支給されます。
配偶者の加給年金額:239,300円

ご注意ください

障害基礎年金に3級はありません。初診日に国民年金に加入していた方は、障害等級1級または2級に該当しないと、障害年金は支給されませんので注意しましょう。

事後重症請求の流れと必要書類

事後重症請求の流れと必要書類

障害年金を事後重症請求する手続きの流れは以下のとおりです。

▶︎STEP.1:初診日を特定する

最初に行うべきことは、初診日の特定です。初診日が分からないときは、医療機関に問い合わせてみましょう。

▶︎STEP.2:保険料の納付要件を確認する

障害年金は、年金保険料を一定期間以上納付している必要があります。過去に年金を納めていない期間がある方は、年金事務所で保険料納付要件を満たしているか、確認しましょう。

▶︎STEP.3:必要書類の準備

障害年金の請求に必要な書類を準備します。主な書類は以下の通りです。

①受診状況等証明書…初診日を証明するための書類。
②診断書…現在の障害状態が記載された医師の診断書。
③病歴・就労状況等申立書…自身の症状の経過や就労状況などを詳細に記載した書類。
④年金請求書やその他添付書類…預金通帳のコピーなど。

▶︎STEP.4:書類の提出

必要書類が揃ったら、年金事務所などに提出します。提出後、日本年金機構による審査が行われます。審査期間は通常3か月程度です。

事後重症請求の注意点

事後重症請求を進めるうえでは、以下の点に十分注意する必要があります。

65歳前に請求が必要

事後重症請求の請求期限は「65歳誕生日の前々日まで」です。この日を過ぎると、たとえ症状が重くなっていても事後重症請求はできません。手続きのタイミングを逃さないよう注意が必要です。

老齢年金を繰り上げ受給すると、事後重症請求できない

老齢年金の繰上げ受給とは65歳を待たずに、60歳から64歳の間に年金をもらい始める制度です。

この場合、「65歳に達した」と見なされるため、事後重症請求ができなくなります。持病などがあり将来的に障害年金を請求する可能性がある方は、繰り上げ前に慎重な検討が必要です。

診断書の有効期限は「現症日から3ヶ月以内」

事後重症請求では、現時点の障害状態を示す診断書が必要です。この診断書は、現症日から3ヶ月以内に提出しなければなりません。

現症日とは、診断書の症状が「いつ時点の状態か」を示すもので、診断書の所定欄に記載されています。診断書の作成日とは異なりますので、注意しましょう。

以下は精神の障害用の診断書になります。

診断書の有効期限は「現症日から3ヶ月以内」

たとえば、診断書の現症日が6月15日であれば、有効期限は9月14日となります。取得後はできるだけ早く提出しましょう。

事後重症は現在から未来に向けての給付

事後重症請求では、過去にさかのぼっての受給はできません。請求した月に受給権が発生し、その翌月から年金が支給されます。

たとえば、実際に症状が重くなったのが3年前だったとしても、3年前にさかのぼって受給することはできません。

事後重症請求は早めに手続きしよう

事後重症請求の場合、年金の支給は「請求月の翌月」から始まるため、手続きが遅れるとその分、本来受け取れるはずの年金が失われてしまう可能性があります。

障害年金は月単位で管理されており、たとえば、6月30日に請求した場合は7月分から支給されますが、7月1日に請求した場合は8月分からの支給になります。たった1日違うだけで支給開始が1ヶ月遅れるため、早めの対応が肝心です。

事後重症請求は症状が悪化したら、できるだけ早く手続きを始めることが大切です。でも、体調がすぐれないなかで動くのはとても大変ですよね。そのようなときは、専門家である社会保険労務士(社労士)に頼ってみましょう。書類の準備、作成、内容の確認など幅広く対応してくれるため、手続きの負担が大きく減ります。また、受給までの時間が短縮されることもあります。

 不安を抱えてひとりで悩まず、まずは一度、当事務所へご相談ください。

社会保険労務士梅川 貴弘

社会保険労務士
梅川 貴弘

まとめ

障害年金の請求にはさまざまな方法がありますが、なかでも事後重症請求は、害認定日には症状が軽かったものの、その後悪化したケースに適した手続きです。

障害認定日時点の医療機関が既に閉院しているなどの事情により診断書の取得が困難な場合にも、現在の状態を基に請求できるのが大きな特徴です。

ただし、事後重症請求には請求期限や診断書の有効期限など、注意すべき点も少なくありません。請求が遅れることで本来受け取れるはずの年金額が減ってしまうこともあるため、障害の悪化を感じたらすぐに動き出すことが大切です。

もし手続きに不安がある場合は、社労士などの専門家に相談することで、手続きの負担も軽減し、よりスムーズに請求を進めることができます。初回相談を無料で行っている事務所も多いため、まずは一度相談してみましょう。

障害年金の事後重症請求に関するよくある質問

Q 診断書はどの医療機関に依頼すればいいですか?

現在通院している、または直近の診察を受けた医療機関に依頼するのが基本です。診断書は受給を左右する重要な書類です。現状をしっかり診断書に反映してもらうことが大切です。

Q 診断書の有効期限はいつから数えますか?

診断書の有効期限は「現症日」から3か月以内です。現症日は「作成日」とは異なりますので、注意が必要です。遅れて提出すると無効とされる場合があるので、取得後は速やかに手続きを進めましょう。

Q 事後重症請求と認定日請求、どちらを選ぶべきですか?

障害認定日当時に等級に該当していた可能性があり、その医証(診断書など)も用意できる場合は、認定日請求を検討しましょう。認定日請求が認められると、 過去にさかのぼって年金を受け取れるため、受給総額が多くなります。一方、当時の資料が残っていない、もしくは症状が軽かった場合は、事後重症請求が現実的です。ケースバイケースで判断が分かれるため、迷ったときは専門家に相談することをおすすめします。

Q 事後重症請求で審査に通らないことはありますか?

はい、提出された書類に不備があったり、障害等級に該当しないと判断されたりした場合、請求が認められないことがあります。

Q 一度申請して不支給になった場合、一生もらえないのですか?

いいえ、一度不支給になったとしても、一生受給できないわけではありません。ただし、不支給となった理由によります。例えば、症状が軽くて障害等級に該当しないと判断された場合は、その後症状が悪化すれば、再度請求することが可能です。

再請求の際には、現在の障害状態を反映した診断書や申立書を新たに用意し、前回と状況が変化していることを示すことが重要です。

当事務所の事後重症請求における受給事例

S様は、うつ病により外出もままならない状況です。別の社労士事務所では、来所して面談が必要と言われたため、困っていました。当事務所のHPを調べ「面談不要」の体制に安心されご依頼いただきました。ご本人の負担を抑えながら進めた申請により、障害基礎年金2級の受給が認められました。

H様は、20代の頃に転職をきっかけにメンタル不調を発症。当初は適応障害との診断で治療を開始しました。以降、気分の高揚と落ち込みを繰り返しながら、双極性障害の治療を継続しています。ご主人からのご相談をもとに申請を進め、障害厚生年金3級の認定を受けた事例です。

S様は、10年以上前からメンタル不調に悩まされ、うつ病を発症。現在は双極性障害と診断され、働けない状況が続いています。医師にうまく伝えられない日常生活の内容を報告書にまとめ、現在の生活状況を正確に伝えたことで、障害厚生年金3級が認定されました。

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